セルリアンブルー・エアー(女性版)
作 ： 揚巻
(♂０：♀２)
女１♀：
女２♀：
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＜声劇メモ＞
・使用前に一度更新（F5）お願いします。
・途中2人で言うシーンが一箇所あります（２人：と表記してあります）
・女1はラスト、女２は冒頭とラストに【しょうらいのゆめ…】を言う箇所がありますが、
そこは演者さんが好きに変更してください。
・会話劇ですので、間は自由にとってください。
・アドリブも大丈夫ですが、演者同士意思の疎通がとれる範囲でお願いします。
・言い回しや語尾は変えて頂いて大丈夫です。
・呼称の「アンタ」をお互いの名前に変えて頂いても大丈夫です
・上演時のタイトル表記に関しましては(女性版)を省いて
【セルリアンブルー・エアー】のみで大丈夫です。付けてもいいです。
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二人、座っている。
二人ともぼんやりしている。
女１：ねえ
女２：んー？
女１：アンタさ、どんな自分になりたい？
女２：しょうらいのゆめ。わたしはおおきくなったら【お好きな夢】になりたいです
女１：へー
女２：いや、ガチ受けしないでよ。つまり、こういうこと？って聞いてんの
女１：そういうんでもいいし、ふわっとしててもいい
女２：あした美味しいもの食べたい
女１：それ「なりたい」じゃなくて「やりたい」ことでしょ
女２：どう違うの
女１：つまり、好きな時に好きなもの食べれるような仕事を「やりたい」とかさ
女２：料理人
女１：安直
女２：じゃあ、社長
女１：…まぁ、確かに好きなものを好きなだけ食べれるよね
女２：お寿司屋さんのパネルの、端から端まで
女１：社長なら回らないお寿司食べなさいよ
女２：おおおお
女１：おおおおじゃないし。で、なんの社長？
女２：えーっと、べんちゃー
女１：意味わかってんの
女２：あ、美味しいものって言ったらさ、駅前にラーメン屋できたの知ってる？
女１：昼に行列できてるとこでしょ
女２：そうそう、通りの角までなっがい行列できてるとこ
女１：美味しいの？
女２：知らない
女１：なによ、それ
女２：なんかさ、9時に並ばなきゃなんないんだって
女１：ラーメン屋でしょ？3時間待ちって回転悪くない？
女２：特製ってのがあるんだよ。1日限定36杯っての
女１：キリ悪
女２：その特製を食べたかったら9時並びは必須、だってさ
女１：ふーん、それ食べたいの？
女２：食べたい。でも、社長ってだけじゃ無理じゃん。
だってさ、行列に向かって「私は社長よ！！」って言ったところで
「だからなんだ並べよ」ってなるでしょ。だから、早起きできるようになりたい
女１：え、なんの話？
女２：どんな自分になりたいか
女１：…
女２：いやいや、聞いたのアンタでしょ？
女１：うん、聞いたの私だけどさ、聞いたこと忘れるくらいの助走だったね
女２：飛行機みたいじゃない？ゴゴゴゴゴキーーン！
女１：うるさい
女２：アンタどうなのよ。特製食べたくないの？
女１：食べたいか食べたくないかって言えば食べたいよ。
ただ朝から並んでまでは食べたくないな
女２：じゃあどうやって食べるのよ
女１：食べなきゃいいんじゃないの？
女２：却下！あなたは特製ラーメンを！並ばずに！どうやって食べるんでしょうか？！
女１：あーはいはいはいはい、じゃあラーメン屋の経営者になります
女２：なんですと！
女１：そしたらいつでも食べられるじゃん。あ、キミ、チャーシューと煮卵追加で
女２：えーズルーい
女１：悪いわね。アンタは早起きして並んでちょうだい
女２：じゃあ私、ラーメン屋の社長になる
女１：私、経営者なのに？
女２：社長と経営者ってどう違うの
女１：しらない
女２：まあいいや、じゃあタダで食べさせて
女１：いやいや、払ってよ
女２：アンタ、友達からお金とるの？
女１：なら私がタダで食べさせてって言ったら奢ってくれんの？
女２：お金とるに決まってんじゃん
女１：なんだとー、このー
女２：お、殴る気か？訴えるわよ
女１：やれるもんならやってみろ
女２：あれよ、い、いけない…ナントカぼうがい？
女１：え、なにそれ
女２：あるじゃん、い、いけないしていぼうりょうくぼうがい？？
女１：威力業務妨害、ね
女２：あ！それそれ！弁護士になれば？
女１：これだけでなれるんならありね
女２：チョロいな
女１：いや、アンタに言われたくない
間。
女２：なんかラーメン食べたくなってきた
女１：私も
女２：いっちゃう？
女１：駅前の？
女２：そそ、特製
女１：もうさすがに売り切れでしょ
女２：だよねー
間。
２人：ラーメン食べに行かない？
女２：駅前行く？
女１：いや、北海道
女２：北海道！？
女１：飛行機ですぐでしょ
女２：いいじゃん行こうよ
女１：ラーメン横丁で食べたい
女２：いいね
女１：どこに入るか迷いそう
女２：ハシゴすりゃいいじゃん
女１：ラーメンのハシゴかあ
女２：私いけるよ？３件は行く
女１：私、２件が限界かも
女２：マジで、老いた？
女１：老いたなー部活帰りにさ、替え玉３はいけたのに
女２：私４
女１：対抗してこないでよ
女２：アンタに勝てるのってそれくらいだからいいじゃん
女１：勝ち負けいる？
女２：女は常に戦い続けるものよ
女１：あっそ
女２：今から行く？それとも明日の朝イチ？
女１：今からだったら夕方には着くから…飲めるわね
女２：飲むのは朝がいいわよ？ハイトクテキでさ
女１：意味わかってないでしょ
女２：ハイにお得的
女１：はいはい
女２：ダシャレ？
女１：うるさい
女２：あ、でも朝イチで起きるなら、駅前のラーメン屋並べるね
女１：結局駅前なの
女２：だってさ、美味しいラーメン食べられればいいんでしょ？
女１：そういうんじゃない
女２：そうなの？
女１：…
間。
女２：行こうよ、北海道
女１：そうね
女２：よし、へーーーい！タクシー――！！
女１：はぁ！？
女２：ほら、乗って乗って！
女２、止めたタクシーに女１を無理矢理乗せる
女１：ちょっと…！
女２：おっちゃん！空港までよろしく！
女１：待ってって…！
女２：北海道行くんでしょ？！
女１：それは言っただけで…
女２：有言実行、母校の校訓忘れた？
女１：…
女２：北海道、楽しみね！！
女１：…うん
間。
飛行場の屋上展望デッキ。ベンチに腰掛け、飛び立つ飛行機を眺める２人。
女２はキーーンという飛行音に耳をふさいで騒いでいる。
女２：ひーー！うるさい！！
女１：…
女２：乗ってたら全然静かなのにさ、外だとこんなうるさいのなんでだろうね！？
女１：上と下じゃ世界が違うのよ
女２：あ！？なにか言った！？
女１：…なにも
女２：はあ！？！
女１：なーにーも！！
女２：あ、そっか！！
女１：…
やがて飛行機は彼方へ飛び立って行く。
展望デッキに静寂が戻る。
女２：今の、北海道行きかな？
女１：かもね
女２：じゃあ次のに乗ろうよ！
女１：そうね
女２：…
女１：…
間。
女１：なんでここに来たの
女２：え、北海道に行くためでしょ
女１：馬鹿話の延長でしょ、あんなの
女２：まあね
女１：なんでよ
女２：んー強いて言うなら…
女１：…
女２：アンタと修学旅行に行きたかったからかな
女１：…！
女２：（笑う）
女１：…憶えてたの
女２：北海道とラーメン、で思い出した
女１：そっか
女２：修学旅行行く前に、あんな風に喋ったよね？
ガイドブック見ながら、ここがいい、いやこっちだ、ってさ
女１：言ってたね
女２：でもアンタ、行けなくなっちゃったから
女１：…うん
女２：だからさっき、北海道って言われてさ、
北海道かー今なら行けるよなーって思ったら行きたくなったんだ
女１：行きたいね
女２：行こうよ
女１：そうね
女２：うん
女１：今の私たちにはそれができるもんね
女２：そうだよ
女１：っていうかアンタさ、なんでそんなお金持ってんの
女２：え？
女１：タクシー代、出してくれたでしょ、そん時、お財布の中見えた。
なんであんな持ち歩いてんのよ
女２：そこ気になる？
女１：なるでしょ、いつもお金ないって言ってる奴が
女２：今日はね、アンタと高飛びするつもりで来た！
女１：じゃ、北海道のチケット代も出してくれるの
女２：いいよ！
女１：…っていうかそのお金、ホントになんなのよ
女２：これはね、お祝い金
女１：なんの？
女２：私、昇進したの
女１：へえーおめでと
女２：なんと！支店長だよ
女１：すごいね、今いる店舗？
女２：いや、仙台
女１：え？
女２：私、転勤するんだ
女１：いつ？
女２：来月
女１：そっか…
女２：…うん
女１：かっこいいじゃん
女２：…まあ、私入れて５人しか従業員いないけど
女１：規模なんて関係ないって、すごいよ
女２：…うん。だから行きたかったんだ、北海道
女１：え？
女２：あっち行ったらしばらく会えないし
女１：…そうだね
女２：あとさ、飛行機から仙台を見たかったんだ、
ああ、私はここに行くのかーってさ
テキジョウシサツっていうの？
…あ、いや、敵じゃないよね、いいとこだもんね。
牛タン、美味しいんでしょ？あと何があるんだっけ、
あ、冷やし中華は食っとけって言われたな。
モリの都っていうんだってね？いいよなあ森。
自然豊かで牛がいっぱいいるんだろうなあ、
私、今からワクワクしてるんだー！
女１：ねえ
女２：ん、なに？
女１：…不安なの？
女２：えー！ぜーんぜん！余裕だよ！！ははははは！
女１：そう？
間。
女２：…はぁ…私の嘘ってなんでアンタにはバレるんだろ…
女１：言いなよ
女２：…まあ、不安っていうかさ、私、不器用だからひとつのことしかできないし、
それでシテンチョウとか、やれるのかなって
女１：アンタならできるって思ったから、上はそうしたんでしょ。
別にくじ引きで決まったわけでもないんだし
女２：くじ引きだったらまだ良かったなあ
女１：はあ、なんで
女２：何かあってもさ、「クジで決まったせいです！」って責任逃れできるでしょ
女１：なによそれ
女２：認められるって、怖いね。嬉しいのにさ、不安、っていうか、
一気に背負うもんが増えるっていうか。義務とか責任…みたいな
女１：…責任か
女２：でも楽しみにしてるのは嘘じゃないよ。
…それで、アンタはなんで北海道行きたかったの？
女１：別に。なんとなく行きたいなって思っただけ。修学旅行でも行けなかったし
女２：それだけじゃない気がするなあ
女１：…それだけよ
女２：なによー言いいなよー
女１：…
女２：言いいなよーねえー
女１：結婚するの
女２：ひぇっ！アユミくんと！？
女１：うん
女２：マジで！！おめでとう！！いついつ！
女１：半年後かな
女２：結婚式には呼んでよねー
女１：もちろん
女２：もう準備とかしてんの？
女１：アユミが張り切ってるよ。式は好きなようにしたいってさ
女２：結婚式はオンナノコの夢っていうけどさ、
オトコノコにも夢があるんだねえ、わかるわかる
女１：ホントにわかってんの？
女２：少なくともアンタよりはわかってるつもりよ
女１：彼氏作ってから言って
女２：ぐはっ
間。
女１：…だから、行きたかったの
女２：ん？
女１：結婚したら、私一人で旅行…なんて、しづらくなるでしょ
女２：そっか
女１：さっきアンタが言ってたこと、私にもわかるよ
女２：どれ
女１：義務とか責任…ってやつ。嬉しいはずなのに、不安もあるよね。
人一人の人生を背負うって…怖いな
女２：…そうだね
女１：修学旅行行けなくなった時さ、
私は一生北海道には行けないんだって思ったりしたんだ。
でも、行けるんだね。ここに来て思った。
あの頃できなかったことが今の私たちにはできるんだって
女２：うん。自由だよ
女１：自由だよね。きっとあの頃の私たちが、夢見てた自由なんだよね。
でも今の私には、あの頃の方が自由だったって思えるんだ。不思議だね
女２：おんなじブルーでも違うってことだよ
女１：ブルー？
女２：あの頃は青春の青、今はマリッジブルーの青
女１：茶化さないでよ
女２：茶化してないよ、そう思ったの。この空と同じ
女１：空？
女２：あの頃、学校の屋上でさ、空見てたよね。飛びたいなあとか言っちゃって
女１：実際飛ぼうとした馬鹿いたけどね
女２：いたね。…あ、私か。でも、今の私たちは飛べるんだよ
女１：うん。今からカウンター行って、券買って、
ちょっと待ってれば数十分後には空の上ね
女２：なのになんで私たちは、ここで見てるだけなんだろうね？あの頃みたいにさ
女１：飛べるのにね
女２：飛べるのにねー
女１：ブルーか…
女２：空、青いなあ…
間。
女１：ところでさ、アンタは何ブルーなわけ
女２：んー、私はセルリアンブルーがいい
女１：は？
女２：この空みたいな色だよ。スカイブルー、コバルトブルー、ダークブルー
色んな青があるけど、私はセルリアンブルーが好きだな
女１：空の青か…
女２：いいでしょ
女１：そもそも、なんで私がマリッジブルーでアンタがセルリアンブルーなのよ
女２：じゃあ、一緒にセルリアンブルーになろうぜ
女１：青春か
女２：いいんじゃない？
死んだじいちゃんが青春はいくつになってもいいもんだって言ってた
女１：ホント？
女２：たぶん
女１：適当ばっかりいって
女２：あ、また飛行機が飛ぶよ
飛行機が滑走路から離陸していく。また展望台に大きな飛行音が響き渡る。
それに動じず、飛び去る飛行機を見送る二人。
女１：…帰ろっか
女２：いいの？
女１：正直言えば、少し惜しい気持ちもあるんだ。今ここで北海道行かなきゃ、
これから先行けるタイミングなんてないかもしれないって。
北海道いって、ラーメン食べて、飲んで、そのまま帰ってきてもいいし、
朝まで飲んでもいい。アンタとなら楽しいってわかってるから
女２：うん、絶対楽しい
女１：行っておけば良かったって、後悔する日がくるのかもしれないけど、
でも、なんだろう…今はすごく、満足した気持ちなんだ
女２：わかる、私も
女１：なんだろうね、これ
女２：行けるからだよ
女１：北海道？
女２：どこでも。一緒じゃないかもしれないけどさ、私もアンタもできるんだよ。
それが（※胸を叩く）ここでわかってるのよ
女１：くさいこと言っちゃって…帰るよ
女２：はーい
二人は立ち上がって、展望台の出口に向かって歩き出す
女２：ねえ
女１：ん？
女２：どんな自分になりたい？
女１：なによ突然
女２：そっちが先に聞いてきたのよ
女１：そうだった？
女２：うん
女１：しょうらいのゆめ。わたしはおおきくなったら【お好きな夢】になりたいです
女２：ホント？
女１：昔はそう思ってた
女２：私は【お好きな夢】になりたかった
女１：あれ、マジだったの？
女２：うん
女１：今は？
女２：あした美味しいもの食べたい
女１：揺るがないねえ
女２：まあね～
女１：じゃあ明日早起きして駅前のラーメン屋行こうよ
女２：あ、いいねえ。ハイトクテキにビール飲もう
女１：そうね
女２：で、どんな自分になりたいの？
女１：まだ聞くの
女２：聞きたーい
女１：なりたい自分ねえ…
女２：私みたいにさ、やりたいこと、でもいいよ
間。
女１：そうね…じゃあ私は
再び飛行機が二人の頭上を飛んでいく。
女１の声は爆音にかき消されて聞こえない。
女１：あー飛行機か…聞こえなかったでしょ
女２：聞こえなかった。もっかい言って
女１：やだよ。残念でしたー
女２：ねえねえ、何て言ったの？
女１：二度も言いませんー。あーあーいいこと言ってたのになあー
女２：（小さく笑っている）
女１：ちょっと、どうしたの？
女２：（笑う）
女１：なによ…あ、まさかさっきの聞こえてたんじゃ…
女２：聞こえた。でもって私もそうなりたい！
女２、女１に抱き着く。振りほどいて逃げる女１。
学生のようにふざけながら展望台を後にする二人。
空の端から夕焼けの赤が緩やかに広がり、青と優しく混じり合っている。
著作権は揚巻にあります。
ネット上での上演に関しましてはご自由にどうぞ。