黄昏線(たそがれせん)
作 : 揚巻
(♂0:♀2)
イチ(♀):
フミ(♀):
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<声劇メモ>
・使用前に一度更新(F5)お願いします。
・会話劇ですので、間は自由にとってください。
・アドリブも大丈夫ですが、演者同士意思の疎通がとれる範囲でお願いします。
・言い回しや語尾は変えて頂いて大丈夫です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【母校の通学路を歩くイチとフミ】
イチ:ホント、びっくりした
フミ:偶然ってすごいね
イチ:いつ帰ってきたの?
フミ:昨日。…で、明後日、戻るんだ
イチ:学校で何してたの?
フミ:学校じゃなくて、学校の裏にさ、墓地あるじゃん。
そこにじいちゃんのお墓があるの
イチ:お墓参りか
フミ:あんまこっち帰ってこないからさ。
せめて帰ってきたときくらいはね
イチ:うん。ご先祖様大事よ、えらい
フミ:ふふ、ありがと。…イチはなんでこんなとこにいるの
イチ:ほら、あそこ、歯医者
フミ:虫歯?
イチ:定期健診。歯石取ってもらったりさ
フミ:まじめー
イチ:中学のときから通ってるからね。
おかげで、通学気分を月イチで味わってるよ
フミ:上りきつくない?
イチ:きついきつい。でもさ、車使うような距離でもないじゃん。
駐車場代もかかるし
フミ:じゃあ「健康のため」って言い聞かせて登山するしかないね
イチ:(笑う)……あ…
フミ:ん、なに?
イチ:懐かしい、学校のチャイム聞こえる
フミ:……あー、ホントだね、…下校のチャイムかな
イチ:(作り声で)『もう夕方かあ、フミ、帰ろう』
フミ:(笑う)『えー!もっと遊びたい!』
イチ:『じゃあ、途中で駄菓子買おう』
フミ:『賛成ー!』
【二人、笑い合い、緩やかな坂を下りていく』
フミ:…にしても、通学路、懐かしいなー
イチ:何年振り?
フミ:卒業以来だよ。高校はバス通学だったし
あー下山するのはラクだねえ
イチ:フミ、よくそう言ってたね、下校は下山で、登校は登山って
フミ:山の上に学校あるんだからそうじゃん
イチ:山の上じゃなくて、中腹ね
フミ:一緒よ。…はあ、よくこの坂毎日登れたよね、あの頃の私達
イチ:若さ故にできることってあるのよ
フミ:それね、…おっとっと
イチ:ちょっと、フミ、気を付けてね。この歳で転ぶと、まあまあ痛いよ
フミ:…確かに。…ねえ、なんか、道が狭く感じない?
イチ:あーわかる。あの頃とそんなに身長変わってないのにね
フミ:でも…(深呼吸する)…この道の匂い、いいな
イチ:うん、私もすき
【二人、ゆっくり歩き続ける】
イチ:フミさ、向こうではどうなの?順調?
フミ:まあまあだね、良くも悪くも。
でも、きっと「まあまあ」なのが幸せなのかな
イチ:へえ、大人になったじゃん
フミ:ふふん、でしょう?…それで、イチは?
イチ:まあまあ
フミ:一緒じゃん。…二人して、幸せってことかな
イチ:ねえ、幸せってさ、あの頃は、定義…みたいなのがあったよね
フミ:あったあった
イチ:お金持ちになるとか、
フミ:大きな家に住んでるとか、
イチ:フカフカの犬を飼ってるとか、
フミ:美人になるとか、
イチ:勉強しなくても頭いいとか、
フミ:お菓子食べ放題とか、
イチ:(笑う)
フミ:なによう
イチ:変わんないね、フミは
フミ:もうー。…それで?
イチ:幸せって「普通じゃない、特別なもの」だったなって。
沢山だったり、大きかったり、綺麗だったり
フミ:「まあまあ」なんかじゃなかったよね
イチ:普通なんて嫌!ってさ
フミ:いつからかな、まあまあが幸せだと思えるようになったの
イチ:いつからだろうね…
【フミが店の前で足を止める】
フミ:あ、駄菓子屋!……あれ、お店変わった?
イチ:今はね、ケーキ屋。息子さんがお店継いだんだ
フミ:ばあちゃんは?
イチ:元気だよ。たまーに散歩してる
フミ:いいなあ、私もそうありたい
イチ:健康、大事よね
フミ:じゃあ今は、買い食いが駄菓子じゃなくお菓子になってるってこと?
イチ:まあ、あの頃も今も下校の買い食いは禁止だろうけど
フミ:してたじゃん
イチ:こっそりね
フミ:えーいいなあ、あの頃ケーキ屋だったら、ケーキ食べながら帰れたのに
イチ:あの頃のお小遣いじゃ無理でしょ、ケーキ高いし
フミ:あー、確かに
イチ:その時々の丁度良さってのがあるのよ、あの頃の私達には駄菓子で十分
フミ:ホントだね、…駄菓子屋のばあちゃん、ありがとう
イチ:ほら、行こう
フミ:うん
【歩き出す二人】
フミ:(小さく笑う)
イチ:どしたの
フミ:こうして、イチと喋りながら帰ってるの
あの頃のまんまだなって。違和感なくてすごい
イチ:こんなものじゃない?
フミ:前にこっち帰った時さ、委員長に会ったけど、すごいよそよそしかったー
イチ:ちょっと、一緒にしないでよ。フミは特別なんだからさ
フミ:へへ、ごめん………あ……
【フミ足を止め、駐車場から町を見下ろしている。
一望できる町は、夕陽に赤く染まっている】
イチ:…ホント、そこ好きよね
フミ:うん、ここから町を眺めるの、好き
イチ:夕陽に染まった町並み…ね、…今日も綺麗
フミ:こんなに赤くて眩しいのに、ゆっくり夜の気配がしてる…
イチ:…私、ずっとここに住んでるのに、久しぶりに見たなあ。
今日、フミに会ったおかげだね、…また一緒に見れて嬉しい
フミ:…そんなこと言われると泣いちゃうよ
イチ:…
フミ:…
イチ:黄昏線(こうこんせん)…
フミ:ん?…高校生?
イチ:違うよ「こうこんせん」
フミ:何それ
イチ:天文学の言葉なんだけどね、本来は昼半球と夜半球の境界線のことを言うの
フミ:もっとわかりやすく言って
イチ:宇宙から地球を見たら、明るいところと暗いところあるじゃない?
フミ:ああ、その境界線?
イチ:そう。本来はそういう意味らしいんだけど、
私は、昼と夜の境目、って意味で覚えててさ。
ここで町を見下ろしてると、その境界線が
頭の上を、ゆっくり追い抜いていくような気がしてた。
フミ:中学生なのにそんなかっこいいこと考えてたの?
イチ:えー、かっこいい?
フミ:うん、かっこいい。いいなあ
イチ:ふふん
フミ:ねえ、その「こうこんせん」ってどう書くの
イチ:黄昏(たそがれ)、に、電線とかの線
フミ:たそがれせん
イチ:その言い方、いいね
フミ:私たちは今、黄昏線(たそがれせん)の上にいるわけね
イチ:そうだね
【二人、夕日の町並みを眺めている】
イチ:…ねえ
フミ:なに?
イチ:フミはここからの景色が好きで、ずっと見てたの?
フミ:それもあるけど、それだけじゃない
イチ:そうなんだ
フミ:…黄昏ついでに言っちゃうとさ、帰り終わりたくなかったんだ
イチ:帰り終わりたく…?…不思議な言葉ね
フミ:私が作った言葉
イチ:なにそれ
フミ:だってさ、この坂を下(くだ)り切ったら、イチの家があるじゃん。
…そしたらそこで1日が終わるんだもん
イチ:どういうこと?
フミ:あの頃の私達ってさ、友達とバイバイしたら、
あとは家に帰って、ご飯食べて、お風呂入って、宿題して、寝て、1日が終わるじゃん。
友達とバイバイするのって、1日の終わりの始まりだったの
イチ:それが嫌だった?
フミ:うん。私、イチとバイバイしたくなかったんだ
イチ:そっか…
フミ:そうよ。…イチが、「こうこうせん」とか崇高なこと考えてたとき、
私はそんなガキっぽいこと考えてたの
イチ:「こうこんせん」ね
フミ:もう!そういうこと言うー!
【笑い合う二人】
イチ:…私は、フミとここで町を眺めるの、好きだったなあ
フミ:そうなの?
イチ:私もおんなじ。「たそがれせん」が無くなって夜になっても、
フミと一緒にいたかった
フミ:そっか
イチ:門限あったから無理だったけどね、中学生なんてそんなもんだね
【再び、町並みを眺める】
フミ:…そろそろ行こっか
イチ:うん、そうだね
【再び坂を下りはじめる】
フミ:私さ、今日偶然イチに会えて、すごく嬉しかったよ
イチ:私も。フミが元気で良かった
フミ:イチも元気だって、年賀状で知ってたけどさ、全然会えなかったもんね
イチ:会おうね、って毎年書いてたのに、なかなかね…
フミ:でも、また書くから、年賀状
イチ:うん、私も書く
フミ:お互い、身体には気を付けていこうね
イチ:そうね、まあまあで頑張っていこう
【坂を下り切った二人】
フミ:…じゃあね、イチ
イチ:うん、じゃあね
【二人、それぞれの方向に向き直るが、】
イチ:…フミ!
フミ:なにー?
イチ:あのさ…
フミ:私ね!イチが言いたいことわかる!
だから、先に言っておくね!……賛成ー!!!
イチ:(笑う)
フミ:(笑う)
【再び近づく二人】
イチ:…どこ行こっか?
フミ:そうだなあ…じゃあまずは、…黄昏線(たそがれせん)を追い抜こうぜ
イチ:なにそれ
【笑い合う二人の影が夕暮れに消えていく】
著作権は揚巻にあります。
ネット上での上演に関しましては規約を守った上でご自由にお使いください。